大久保にゃんにゃん物語~リフレ店Nオープン前に、Gちゃんとジョナサン



リフレは今も昔も「素人」が売れる。


私は19才でリフレ経験はあるけど、18才でリフレ経験が無い設定。

お客さんには「何も知らないまま、いきなり世界一稼げるリフレ店Nに来てしまった」と話している。


客付はよく、夕方に出勤してラストまで居れば平均して10人は客がついた。

リフレ業界では客がつかないことを「お茶を挽く」と言うが、Nに来てからは出勤したのに客がつかずにゼロ円で帰ったことは一度もない。

お客ゼロの切なさを知っているだけに、推してくれる店員さんと選んでくれるお客さんには感謝するばかり。

目次

承認欲求とお金



リフレに足を踏み入れるきっかけは、各人それぞれの経済的な理由があるにしても、いざ高校の制服に着替えてリフレを始めてしまえば、サービスはすぐに慣れ、多くの男性たちに求められてチヤホヤされる。

「可愛い」「愛してる」「会えて嬉しい」「大好き」「めちゃくちゃ気持ちいい」

歯の浮くような台詞を次々浴びる。

こういった言葉は生理的に受けつけない男から言われたとしても、私は嬉しい。

この人は私の事が好きなんだな。と気づくことは、ホッとする。


リフレをしていると「承認欲求が満たされる」という今までになかった経験をする。

しかも、時間は自由で単価が高く、すぐにお金という成果に表れる。

たくさん稼げて自信がつくし、人から認められるリフレというバイトはいいことだらけ。

男性たちに受け入れられるそれなりのスペックを持つ女の子のなかには、そう思う人も少なくない。



ジョナサン



9月22日の14時から、リフレ店Nがオープンする

前店時代に比較的仲の良かったGちゃんと、12時に店近くのジョナサンで待ち合わせる約束。


お互い遅刻して、13時前に合流。

タバコを吸うGちゃんのために、喫煙席に座った。


「たまーに客もいるんだよね。ここのジョナサン」

Gちゃんはジッポライターでタバコに火を点けながら話す

「お店から近いもんね。私ロッテリアに行くときあるけど、今までお客さん見たこと無いかも」

「気づいてないだけで、結構居るよ。居ても無視だけど。ごく稀に話しかけてくる客が居て、それは本当にウザい。やめてほしい」


2人とも起きたばかりだったが、食事をする気にはなれずドリンクバーだけ注文

ほとんど何も変わらないとはいえ、オープン初日は若干緊張するもの

落ち着いたらお腹すいた事に気づいて、何か食べたくなるかも


「Gちゃん何飲む?ドリンクバー行ってくる」

「ありがとう!じゃあ・・・メロンジュースで(笑)」



MちゃんとEちゃん



あ、MちゃんとEちゃん

モデル体型で可愛らしい2人が店内に入ってくると、すぐに気づく


2人は、私たちの席とは離れた喫煙席に座った


入り口に背を向けて座っているGちゃんは、2人が来たことに気づいていない

私も気づかないふりをして、Gちゃんと話を続ける


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「自由に使えるお金がめちゃくちゃ増えて、色んな遊び覚えていく内に交友関係が広がった。けど彼氏とは上手く行かなくなって別れた。社会的には良くないバイトって自覚はしてるけど、迷うことなく出勤続けてるって感じ。ここで働かないと家賃もそうだし、生活が出来なくなるから出勤し続けるしかない」

メロン味のファンタをストローでチューッと吸いながら私の話を聞いていたGちゃんは、私が話し終えると笑った

「えりすちゃんって何か面白いよね。口調がコメンテーターみたいで。お客さんの前ではどんな話し方なの?」

「お客さんの前では、あんまり自分から話さないよ。ただ聞いて、受け答えて・・・」

「えりすちゃんってガチ恋多い?」

「多いかも」

「めんどくさくない?」

「お客さんはめんどくさくないけど、女の子の方がめんどくさい。どう思われてるんだろうって気になるし、掲示板に書かれるのも気になるし」

「昨日ごめんね。急に誘っちゃって」

「え、全然嬉しかった。でもかなり凹んだ」

「凹んだ?」

「みんな凄すぎて。私は何なんだって」

「あの人たちは、特別だから。気にしない方がいいよ」


視点を上げると、MちゃんとEちゃんがこちらに向かって歩いてきていた


「あ」

私が声を出すと、Gちゃんがハッと後を振り向く

「おはよー!今から出勤?」

Mちゃんが、天使のような笑みで手を振る

「うん!」

Gちゃんが、少しぎこちなく返事

「今日からNだね。オープンから混み合うと思うけど、頑張ろう!またご飯行きましょうね」

「うん!行こう行こう!Mちゃん昨日はごちそうさまでした!」

「ごちそうさまでした!」

Gちゃんに習って私も頭を下げ、Mちゃんにお礼

「えりすちゃん。その服可愛いね」

Mちゃんがスッと私を指差す
ネイルしていない細くて長い指

「あ、ありがとうございます!」

「またお店でね。バイバイ」

柔らかい笑みを浮かべたままMちゃんの後に立っていたEちゃんが、Mちゃんのマネージャー宜しく頭をペコリと下げた

MちゃんとEちゃんが去っていく後姿を眺める

脚長いし髪の毛綺麗だし・・・

明るい所であの2人を見れば見るほど、自分のダサさが際立って落ち込む

勝つためには、もっと可愛くならないと・・・



Nが始まる



「うわーびびったー。あの2人ジョナサンなんて来るんだ」

Gちゃんがタバコに火を点ける

「Mちゃん最近遅刻しなくなったよね」

「そう?結構してると思うけど。えりすちゃん待機に最近居ないから分かんないんだよ。えーっと何の話してたっけ?」

「なんだっけ・・・ガチ恋客!」

「あーそうそう」

「ガチ恋っていうか、お客さんが好意を持って指名してくれるのは嬉しいし、自分の自信にもなる。でも、たまに相手が勘違いしちゃうことが起きて。お店の期待とか、お客さんの期待とか、真に受けて疲れちゃうことはある」

「私は逆に、ガチ恋されたことないな。リピーターも凄く少ないし」


Gちゃんとの話は楽しい

お互いに対してそこまで関心があるわけではないけど、お互い話し合うことで自分の気持ちを整理させてる。

グチャグチャになっていく気持ちや感情を、整えていく。


Nで働き始めたことで、月の収入は10万円前後から200万円ほどに激増した。

毎日、諭吉の札束が入ってくるので、それまでの我慢の反動で物欲が止まらなくなった。

メイク用品や洋服、欲しいものはどんどん買った。

エステや脱毛も通うようになった。


毎日たくさんのお金が入ってくると、自分が強くなった気がした。

風を切って堂々と歩けるようになる。


私はNで働くことで、何か失ったものはあるだろうか

自分自身が経済的にも精神的にも自立したことで、付き合っていた彼氏とは別れてしまったが、やりたいことは何でも出来て、今までに無い交友関係も増えた

1人暮らしをして自立した生活をして、高額な奨学金の返済目処もたっている。


それらは全て、私がNで働くという道を選択したから達成できたことだ


「1時半だね。そろそろ行く?」

「うん!」


Nが始まる。

今日来てくれる常連客は居るだろうか。

どんなお客さんと出会えるだろうか。


今日は、最低でも20万円は持ち帰ろう




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